グリッターデコは、プレシオサ社公認のアンバサダーです。
第4回目は、スワロフスキーとプレシオサのチャトンカットの比較をいたします。フラットストーンではSS9以下のサイズならばプレシオサのほうが美しいという結果になりました。ダイヤモンドの形に近いチャトンは、どのような結果になるでしょうか?スワロフスキーとプレシオサの比較記事は、今回が最後となります。
スワロフスキー、プレシオサのチャトンの構造
スワロフスキーやプレシオサのチャトンは、ダイヤモンドと同様に裏面にV字のパビリオンがあります。
※ダイヤモンドカットの説明は第3回の記事を御覧ください。
ダイヤモンドで方式で数えると、上記の図のチャトンは17面カット。スワロフスキーやプレシオサのようなストーンは、パビリオンの部分のみを数えますので、8面カットになります。
ダイヤモンド方式で、フラットバックストーンとチャトンを数えた場合
フラットバックストーン(8面カットのもの)
8(パビリオン)+1(テーブル)+ 1(裏面)=10面カット
チャトン(8面カットのもの)
8(パビリオン)+1(テーブル)+8(裏面)=17面カット
V字のパビリオンは光を反射しますので、正面からみて同じ8面カットでも、フラットストーンよりチャトンのほうが宝石に近い輝きを放ちます。
カット数が多いと、よりダイヤモンドに近い輝きになる
カット数が少ないと1つ1つのカット面が大きいため、より大きくギラッとした輝きになりますが、テーブルからフォイルが見えてしまいます。クラウンとパビリオンのカットが多いと、放射状の輝きがテーブルに見えるため、ダイヤモンドに近い輝きになります。
ただし、クリスタルガラスに完璧なダイヤモンドカットを施しても、ダイヤモンドより屈折率が劣るためダイヤモンドのようには輝きません。
スワロフスキーのカット
- PP 0, 1, #1100番 8面カット
- PP2-PP13 #1028 14面カット
- PP14- #1088 16面カット
スワロフスキーのチャトンには #1028番と #1088番の間に、フラットの#2058番のようなカットはありません。#1028番の前には #2012番がありましたが廃盤になりました。チャトンが日本の市場で手軽に入手出来るようになったのは、ここ数年ですので、古い品番が混ざっていることはほぼありません。
#1100番 8面カットのチャトン
PP0, 1 は1mm以下のサイズなので、10倍の宝石ルーペでカットが見えるのか判らないレベル。
#1028番 14面カットのチャトン
PP2-PP13
フラットの#2028はテーブルからフォイルがわかりますが、チャトンの#1028はPP13であってもテーブルからフォイルが見えず、ダイヤモンドのような放射状の線が見えます。
#1088番 16面カットのチャトン
PP14から大きなサイズはすべて#1088番の16面カットです。
クラウンだけでなく、パビリオン(裏のV字)はダイヤモンドカットに一気に近づいています。どの角度から見ても、七色の繊細なキラキラとした輝きがあります。
プレシオサのカット
プレシオサは2種類のチャトンがあります。お手頃価格で下位ランクのOPTIMA(オプティマ)、スワロフスキーと競合になるMAXIMA(マキシマ)です。
プレシオサ OPTIMA(下位ランク商品)
- PP 0-SS39 #431-11-111 8面カット
※ 最新のカタログにはMAXIMAのみで、OPTIMAが載っていません。廃盤の可能性あり。市場には流通しています。
プレシオサ MAXIMA(上位ランク商品)
- PP 0 #431-11-199 24面カット
- PP 0-5 #431-11-111 8面カット
- PP 6-SS50 #431-11-615 15面カット
#431-11-111 8面カット
- OPTIMAはすべてのサイズ
- MAXIMAは、PP 0-PP 5
PP5程度なら、8面カットでも充分綺麗です。1.2mm-1.3mmの大きさなので、宝石ルーペを使わないとカットが見えないレベルです。
#431-11-199 24面カット
- PP 0
クラウン、パビリオン面ともにダイヤモンドに近いカット。スワロフスキーの#1088でも完敗。足元にも及びません。この品番は、クリスタルのPP0(0.70-0.80mm)しかありません。
#431-11-615 15面カット
プレシオサのマキシマのサイズPP6からSS50のカットは15面
スワロフスキーの#1018番の16面に比べると、やはり見劣りします。スワロフスキーの#1028番と比べると、プレシオサが圧勝。上の図の赤丸部分のVカットが効いています。この小さいVカットがダイヤモンドカットのような繊細な放射線状の光を放ちます。この小さなVではなく均等に15面カットであれば、もっと単調な輝きだと思います。それでも大きいサイズになるとテーブルからフォイルが見えるため、スワロフスキーの#1088番に負けてしまいます。
参考:OPTIMAとMAXIMAの見分け方
オプティマは裏の金属部分が金色。マキシマは銀色です。
カット別 輝きが綺麗な順
- プレシオサ #431-11-199番24面
- スワロフスキー #1088番16面
- プレシオサ #431-11-615番15面
- スワロフスキー #1028番14面
- スワロフスキー #1100番8面、プレシオサ #431-11-111番8面
サイズ別 輝きが綺麗な順
左のSがスワロフスキー、右のPがプレシオサ。PP0 は一眼レフカメラの90マクロレンズでも写すことができないのでありません。正面から写していないので差がわかりづらくなっていいます。
サイズ別順位
- PP 0 プレシオサ#431-11-199番24面
- PP 1 スワロフスキー #1100番8面、プレシオサ #431-11-111番8面
- PP 2-5 スワロフスキー#1028番14面
- PP 6-13 プレシオサ#431-11-615番15面
- PP 14以上 スワロフスキー#1088番16面
スワロフスキーとプレシオサ、どちらが優れているとは言えない
作るものよって適しているものが異なる
グルーデコやユリシスドンネの作品は、市販の金属土台を使った小ぶりのネックレスやピアスが人気です。これらの作品は、PP6ーPP10ぐらいのストーンを使用します。このサイズではプレシオサのほうが綺麗です。
ブローチなどの大きめの作品になるとPP14~PP18を使うことが多いため、スワロフスキーのほうが繊細な光を放つ作品になります。SSサイズになれば2社の違いもはっきりわかりますが、PP14-PP18程度なら判る人はごく一部ではないでしょうか。
スワロフスキー社とプレシオサ社の戦い
スワロフスキーはある時期、短期間に新しいカット品番を立て続けに出しました。それとほぼ同時期にプレシオサもカットを変えています。スワロフスキーが#1088番なり、少し遅れてプレシオサがMAXIMAを出してから、両社ともカットを変えていません。
両社ともカットだけではなく、裏に貼っている金属部分のフォイルも進化しています。
プレシオサはスワロフスキーの下位互換ではない
プレシオサの#431-11-199番24面はPP0のみの展開。全サイズでこのカットならば、スワロフスキーは完敗。
もちろんスワロフスキー社が作れないことはないと思いますが、オーストリア製となると一体いくらになるのか?たかだかクリスタルガラスにそれほどのコストをかける必要性はあるのか?
逆にこれだけの技術力があるプレシオサ社が、大きいサイズのものにスワロフスキー社ほど細かいカッティングが出来ないわけがありません。
プレシオサ社には、ダイヤモンドカットのジルコニアの製品も販売していますので、ある程度の大きさのチャトンならクリスタルガラスよりジルコニアを販売しようという考えなのかもしれません。
フラット、チャトンの両方とも小さいサイズはプレシオサ、大きいサイズはスワロフスキーが優れている
スワロフスキー社のDIY事業部は撤退しましたが、今後も材料としてスワロフスキー社製のフラットバックストーンもチャトンも購入できます。以前より販売先や購入単位が限らていますので、今までより割高になってしまいます。
自分がどんな作品をつくりたいのか、販売用の作品として安定的に材料を入手したいのかなどを考慮して、購入するのがいいでしょう。
グリッターデコではレザーデコに関してはスワロフスキーにしかないお色を多数使っているため、今後もスワロフスキーを使用いたします。グルーデコ、ユリシスドンネデコに関しては、現在庫がなくなり次第、プレシオサマキシマに切り替えをいたします。
※文中の比較は個人的感想です。